Tー式バランスエクササイズの基本概念は大きく2つの考え方からできています。
1つは、その名前にもあるように”バランス”を基本にすえたエクササイズであるという点です。
そもそも発達障害のお子さんはどこか体の動きがぎこちなく、また側弯症などにもなりやすい傾向があることからバランス運動をすることでインナーマッスルを鍛えると同時に脳の機能にも良い影響を与えることを目的としたため、すべての運動要素に”バランス”が含まれています。
そもそも歴史的に人間の脳が発達したのは二足歩行をはじめたからともいわれています。
実際に二足歩行をする動物は限られ、日常的に長時間直立二足歩行ができるのは人間くらいでしょう。
そして、この身体のバランスを維持しているのは脳の機能によるものです。
この身体バランスの維持には脳幹や小脳、脊髄が関係し、大脳も視覚処理や体性感覚などに関係しているため”バランス”を用いた運動は脳への幅広い良い意味での影響を与えうるのではないかとの考えに基づきます。
またバランスを崩すというのは生命維持にも関する事態にもなり得る(高所からの落下、戦闘時の体勢不利など)ため本能的に恐怖を強く感じます。
小石に躓いただけで大の大人が慌てふためく様を想像していただければわかりやすいでしょうか。
この”恐怖”はPTSDやトラウマなど負の影響を心に強くあたえるものではあります。しかし、良い方向に利用すれば変化への強くて良い影響を脳に与えうるとの考えも”バランス”をベースにしている理由です。
もう1つは、同時に複数の動作を行うという点です。
これも発達障害のお子さんは同時に2つ以上の動作、行動、思考をするのが苦手なことが多く(個人差はあります)あえてその苦手な部分に刺激を与えて強化することで脳へ影響を与えようという考えに基づきます。
ただ発達障害のお子さんは健常域のお子さんよりも苦手分野の克服がより難しい傾向があります。
しかし、同時にいったん興味を抱いて取り組みだすとのめり込むという傾向もあります。
とくにこのTー式バランスエクササイズは遊び感覚で行えるため漢字の反復練習などの学習よりも入り込みやすいでしょう。
イメージ的にはこの二つの考え方に基づいて運動をすることで脳のシナプス、ニューロン(もちろん筋肉や脊髄などにも)に影響を与えて新たな神経回路を構築するというものです。
現段階ではあくまで仮説に基づいたものですが、2,3か月で運動機能の改善がみられ、また副作用は身体上の疾患などがなければ身体エクササイズなのでありません。
リスクがあるとすればバランスを崩して転倒したときに頭などを周囲にぶつけるというような点でしょうか。
これらは布団やマットを敷く、机など危険なものの近くではやらないなどのシンプルな対策で対応できます。
注意点としてはより強い刺激を求めていきなり平均台などの高所などで行わないことです。
落下などの強すぎる恐怖は中断理由となってしまい、とくに発達障害のお子さんは二度と取り組めなくなる可能性があります。
時間としては1回につき1分ちょっとの時間のエクササイズです。
道具は必要ありません。
部屋のなかで行えます。
その点でも取り組みやすいといえるでしょう。