「ひきこもり」について
「ひきこもり」はごく簡単に定義すれば、厚生労働省などの基準ではおよそ6か月をめどに学校や職場などの社会参加を避けて家庭内にとどまることです。
「ひきこもり」については精神的な病気であると考える専門家もいます。もちろんその奥に統合失調症やうつ病などが潜んでいるケースもありますが、その原因や状況などについて個人差があることなどから心の問題であることは確かですが、あくまで症状であるという考えが多いように思います。
私自身も同様の考えです。
ですから「ひきこもり」の症状を抱える方についてはカウンセリングなどで心の状態を整えるだけで前向きになり、すんなりと外の世界へ出られる人もいれば、思考の部分を変えていくことが必要なケースもあるなど関わり方はその方に合ったものが必要です。
ただ共通項もあります。
それは「人への信頼」を大きく損なってしまった心の状態にあるということです。
ですからBe-ハートでは、根本姿勢としてこの「人への信頼」を取り戻すことが肝要だと考えています。
たとえばですが、暴力などで引きずり出して無理に学校へ連れていくケースがあるようですが、これはじつは簡単です。
大人対子供のように体格差があれば難はないでしょう。
しかし、この手法をとれば多くの場合、そのクライアントの心には「人への不信」が増大するでしょう。
悪化していく可能性が多分にあります。
とはいえ、「しばらく様子をみましょう」という形で放置をするのがよいともいえません。
長期間のひきこもり状態は、それだけで社会(学校や職場など)への恐怖を生みます。長期の病欠後などに学校へ戻るのに躊躇した経験のある人も多いのではないでしょうか。
その場合には、少しずつ他者と関わる訓練をしたり、あるいは学校や職場以外に人間関係を構築することもプラスになることがあります。
大事なことは、まずはその人の心の状態を把握して、可能な限り不安定な状態(不信)から安定的な状態(安心、信頼)の状態に戻し、かつ必要に応じて「実際の行動」でも一種のワークとして人と関わっていったり、もともとの「考え方」にひきこもりになりやすい傾向があるならばその「考え方」を修正していくなど多様性のある関わり方が必要だと考えています。
私の印象では、ひきこもりの人は多くが「真面目」で人一倍「責任感が強く」「優しく」、ときに強い「正義感」さえあるように思います。
ただそれがあることをきっかけに、あるいは小さな問題の蓄積などによって、社会的に「不適応」の状態になってしまっているのだと思います。
ですから「不適応」になってしまった部分を修正しさえすれば、本来持っている素晴らしい面を活かしていけるでしょう。
崩れてしまったバランスを、安定的なバランスに戻していけるようにサポートする。
これが心理カウンセラーとして私がクライアントの方に接する基本姿勢です。
「ひきこもり」の方には問題があるから「治す」という姿勢ではありません。
また、「ひきこもり」の方がいるご家族には将来への不安、または自分たちが原因なのではないかなどと考えてご自分を責めることも多いように思います。
じつは「ひきこもり」の方のご両親なども「人一倍真面目」であったり、責任感が強かったり、といった特徴もあるように思います。
カウンセラーのなかには「ひきこもり」の原因を親に求めて、結果「親を敵対視」(自分が親代わりになろうと)するケースもあるようですが、これは確実に失敗するでしょう。そもそも心理カウンセラーはクライアントの親にはなれませんし、なってはいけません。
親に問題があったとしても、そのことを材料に責めても何ら解決には結びつかないのです。
もちろん「親子の関わり方」に問題がある場合は修正が必要ですが、それを一番効率よく簡単に行えるのはカウンセラーとご両親が信頼関係を築けているときです。
ですからBe-ハートでは必要があり、クライアントの方の承諾がある場合は、早い段階でご両親からお話をうかがうことも多くあります。
これらもあくまで心の、あるいは家族関係の「バランス」を回復させるのが目的です。
とくに「ひきこもり」の改善にはこの部分が重要なように感じています。