不登校について
お子さんが不登校になると、多くの親御さんはさまざまな不安や猜疑心や学校などへの不信感、また親としての自分を責めたりといろいろな感情がわきおこって葛藤の中で苦しまれることでしょう。
お子さんへの愛情が深い人ほど、ご自分を責める傾向もあります。
しかし、不登校にはさまざまな原因があり、さらに層を織りなすように複合的な原因であることも珍しくはありません。
いじめ、教師や友人との人間関係、目的の喪失、思春期特有の心理不安、両親の不仲や離婚などの家族関係の問題、幼少期から未発達のままのコミュニケーション能力など、ほんとうにさまざまです。
当ルームでは、いじめなどが原因の心的外傷(トラウマ)がある場合は、お子さんからまずじっくりとお話をうかがいながら溜まった感情を放出して少しでも楽になっていただくようにします。
しかし不登校の場合、それだけではうまくいかないこともあります。
長期のひきこもり状態にある場合などは認知の部分に問題があるケースがあり、その場合は問題のある認知部分の改善が必要です。
また状況によっては行動療法的アプローチも必要になるでしょう。
お子さんが家や自室に閉じこもってテレビや漫画をみたり、ゲームをしたりしているだけだと「楽をしている」とか「怠けている」、あるいは「学校に行きたくないだけ」「さぼっている」などと感じるかもしれません。
しかし多くの場合、不登校のお子さんは「学校に行きたい」「ほんとうは学校に行かなきゃ」などと思っています。
ただ、なんらかのトラブルや堆積した感情が限界にきたなどの理由をきっかけに家へ一時退避したものの「学校へ戻りづらい精神状況」になっていることも珍しくありません。
「戻りづらい」もっとも単純な理由は、欠席している間に学校がどうなっているかわからなくなっているという不安感などがあります。
これはパニック障害において「予期不安」といわれる心理状態と同じような状況になっていることもあります。
その場合には、学校との連携や信頼できる人間(ご両親や兄弟、あるいは心理カウンセラーなど)の付き添いなどでまずは行動療法的なアプローチをするだけで改善するケースもあります。
うつ病への対処法として「まず休みましょう」というのがあります。
不登校児にもうつ症状があることが少なくないことからこの対処法をとることがありますが、上記のようにかえって学校へ戻りづらくなることもあります。
直接、学校へ戻らなくとも、「学校以外の世界」を体験させることで改善がみられることもあります。
不登校への対処法は数多くあり、そのお子さんに合った手法を選択していくことが肝要に思います。
最悪なのは、「放置」です。
「長期のひきこもり」になり、喪失感や絶望感、自責の念や自己否定感を強固なものにしてしまうからです。
長期のひきこもりの場合、35歳を過ぎてからの治療は難しいという人もいます。
それはこれらの負の感情や対人不信の度合いが強くなりすぎてしまい、治療に困難が生じるからです。
孤独であったが故に、負の精神世界の構築が強固になされてしまうのです。
焦りは禁物ですが、長期の「放置」はよくありません。
対処法はあります。
まずはご両親だけがカウンセリングを受けるだけでも違ってきます。
(治療という意味ではありません。お子さんの心理状態がより的確に把握でき、ご両親の不安や複雑な感情などが処理されることで精神的に安定するとお子さんにもよい変化が生まれてきます)
「危険な状況から逃げる」
これは生物として、当然の行為です。
溶岩が流れてきているのに逃げない動物はいないでしょう。
ただその恐怖や不安感から自分の居場所や生活がきちんと定められなくなってしまったのならば、もう一度きちんと設定しなおすということなのです。
不登校のお子さんの心理状態はやはり不安定なものです。
それを安定的なものにするということなのです。
ご両親、お子さんともにほんのわずかな信頼や勇気で、現状は変わるでしょう。