〈転職するかどうかの悩みについて〉
「悩み」にはほんとうに様々なものがあります。
その中で人生を大きく変えるかもしれない現代の「悩み」に「転職するかどうか」というものがあります。
周囲に相談しても、大抵は賛否両論、「転職すべき派」と「今の職場にとどまる派」に分かれるでしょうか。
相談すればするほど、答えはわからなくなってくるかもしれません。
人の基本的な性質は、「変化を恐れる」ので配偶者、親などの家族ほど「今の職場にとどまる派」が多い傾向があるかもしれません。
友人は経済的な一体感が通常はありませんので、自分の冒険願望もあって「転職すべき派」に傾きやすいでしょうか。
それでも、どちらにつくかはその人の性格、個性の影響がとても大きいものです。
尚更、答えはわからなくなってきます。
私の答えは、一つです。
「どちらを選択すべきかは、わからない」
です。
なぜならば条件ひとつ違えば転職したほうがいいのかどうかは違ってきます。
給与額に不満があってより給料が高い職場に転職する。
そのことだけとれば転職したほうがいいに決まっています。
でも、転職先は2年後にはリストラされているかもしれないとしたら、どうでしょう?
高い給料のままかもしれませんし、無職になり職探しをしなくてはならないかもしれません。
また給料は高いかもしれませんが、転職先の上司や同僚とは人間関係をうまく築けないことで大きな精神的ストレスを抱えるかもしれません。今の職場が居心地がよいのならば、選択は難しくなるでしょう。
このように考えれば考えるほど、次々に相反する条件が想起されてくるでしょう。
またこのような条件を事前に想定しておかずに転職してしまったら「想定していた転職とはちがう」という悩みを抱えることになるかもしれません。
そして、また転職。そこも気に入らずに転職を繰り返すことも多いでしょう。
カウンセリングでは、カウンセラーは「転職しましょう」とも「転職はやめておきましょう」とも言いません。
なぜならばそれはクライアントの方の「人生選択」なので、あくまで他者(第三者)であるカウンセラーは選択できないからです。
「人生選択」は、ご本人にしかできません。
では、何をするのかというと、「転職する」と「今の職場にとどまる」の損益(プラスとマイナス)を可能な限り挙げて、そのクライアントの方の性格や人生観などと照らし合わせてクライアントの方が納得できる選択ができる環境をつくるのです。
その過程を経れば、クライアントの方は一時の感情で安易な逃避行動を選択しなくなりますし(考えるのがつらいから→今の職場にとどまる安全策を選択する、あるいは、転職してしまえ)、とくにリスクについて第三者的な視線でご自分を見ることができるようになります。
例えばですが、検討の結果、転職を繰り返すリスクが高い場合に、そのリスクを軽減させるために資格取得や業務に関するスキルを高めるなどの準備行動をまずとるとします。
当面は今の職場にとどまる選択をしたわけですが、ただ消極的にとどまるのではなく「転職の準備」をしながらとどまるので違いが生まれます。
すると、もしかしたらその姿に気づいた上司から高い評価を受けるようになるかもしれません。
そうするとその方はもう転職する気はなくなるかもしれないのです。
「給料」を理由に転職を希望していても、周囲の人から認められると「承認欲求」が満たされるので給与面での不満が軽減されることもあり得るということです。
そして、これは必ずしも「給料を理由にして転職を希望していたけれどじつは上司への不満が潜んでいた」というケースばかりではなく、ほんとうに当初は「給料への不満」だったのが、別の欲求が満たされたことで不満が解消するということはよくあることです。
給与の高い会社が離職率が高いのに、給与は安いけれどやりがいなど他に社員の欲求を満たす要素のある会社の離職率が低いケースがあるのは、それぞれの欲求や不満は分断されているのではなく、相互に関連しているからなのです。
人の心は常に動いて(流れて)、変化しています。
「人生選択」には、そのことも考慮したほうが失敗は少ないものです。
自分一人ではなかなかそのことを意識はできません。
カウンセリングを受けることで意識・無意識双方に影響をうけて納得のできる「人生選択」ができるようになるでしょう。